ドル円予測:金利で見れば112円。なのに156円。その差44円の正体

金利差から見たドル円の目安112円と実際の156円、その差44円を示すグラフ
目次

はじめに

しばらくお休みしていたこのブログを、今日から再開します。これからは週に1回、落ち着いたペースで書いていきます。

再開の1本目は、私がいまドル円を見るときの考え方の全体像です。一言でいえば「方向はプロに借りる。タイミングは自分で取る」。ここでいう「方向」とは、円がこれから弱くなりやすいのか(円安=ドル円が上がる)、強くなりやすいのか(円高=ドル円が下がる)という、相場の大きな流れのことです。この考え方に切り替えてから、売買の判断がぶれにくくなりました。

途中で、金利で見れば112円のはずのドル円が、実際には156円もしている「44円のずれ」の話もします。考え方は三段になっています。方向を決める、危うさを測る、タイミングを取る。順番にお話しします。

一段目:大きな方向は、プロの「構造」の見立てに借りる

円安と円高、どちらに流れやすいか。この大きな方向は、自分では決めません。みずほ銀行の唐鎌大輔さんのような、為替の需給を長く分析しているプロの見立てを参考にしています。

唐鎌さんが見ているのは、日々の値動きではなく「円のお金の出入り」です。私なりに理解している要点は、次の3つです。

  • 貿易赤字:エネルギーなどの輸入代金を払うために、円が売られる
  • デジタル赤字:クラウドやネット広告など、海外のIT企業への支払いが増え続けている
  • 海外で稼いだお金が、円に替えられずに海外に留まる

つまり、円を売る流れは多く、円を買いに来る流れは少ない。だから円は弱くなりやすい、という見方です。

これらは一日や一週間ではほとんど変わりません。だから私は、この「構造」が変わらない限り、方向も変えないと決めています。値動きのたびに気持ちが揺れることが、ずいぶん減りました。

金利では説明できない「44円」

この見立てが本当に合っているのか。私は自分でも、公的なデータで確かめてみました。

日米の金利差とドル円は、2010年から2023年ごろまでよく連動していました。金利差が広がれば、ドル円も上がる。分かりやすい関係です。この関係から計算すると、金利差が縮んだ今のドル円の目安は、約112円になります。

ところが、実際のドル円は約156円(2026年9月の月平均)。金利では説明できない円安が、約44円分もあるのです。貿易赤字も、2022年の約21兆円から2025年には約3兆円まで縮んでいます。これも本来なら、円高に戻ってよい材料です。

金利でも貿易でも説明できない、この44円。私は、デジタル赤字や家計の海外投資のように、景気や金利ではほとんど減らない「円の流出」が支えていると見ています。まさに、唐鎌さんの言う「構造」です。

なお、この計算は金利差だけを使った単純なものです。ドル円の「正しい値段」を示すものではありません。データの出所:FRB・セントルイス連銀(FRED)ドル円月平均、米10年金利、日本10年金利、日本の貿易収支

ただし、構造は方向を教えてくれますが、「いつ」は教えてくれません。そこで二段目が必要になります。

二段目:「円ポジションとドル円」で、危うさを測る

方向が正しくても、相場はときどき逆に大きく振れます。その危うさを測るために、私は毎週、投機筋の円ポジションを見ています。

これは、米国の商品先物取引委員会(CFTC)が毎週公表しているデータです。ヘッジファンドなどの投機筋が、円をどれだけ売り越しているか(買い越しているか)が分かります。市場では「IMMポジション」とも呼ばれます。私はこれをドル円と重ねたグラフにして、「円ポジションとドル円」と名前をつけています。

見方のポイントは、一つだけです。

円の売り越しが積み上がりすぎているときは、「崩れたら大きく崩れやすい」状態。

円を売った人は、いつか必ず買い戻します。皆が同じ方向に賭けていると、介入や金利のニュースをきっかけに、一斉に出口へ殺到します。その結果、円が急に上がります。

典型例が2024年です。7月に円の売り越しが約18万枚と、ここ数年で最大になりました。翌8月にそれが一気に買い戻され、ドル円は月平均で約12円下がりました。

ただし、売り越しの多さは「いつ崩れるか」の合図ではありません。積み上がった後も、しばらく円安が続くことはよくあります。私はこれを、守りを固める「危うさの目盛り」として使っています。

データの出所:CFTC 建玉明細(Commitments of Traders)、FRED ドル円月平均

三段目:タイミングは、自分のローソク足で取る

方向と危うさが分かったら、最後に「いつ入るか」を決めます。ここだけはプロに頼らず、自分で取ります。

使うのは、以前から自分で組んできたローソク足の見方です。ただし今は、大きな方向に沿った入り方だけを探します。円安の流れと見ているなら、ドル円は買いの場面だけを待ちます。

こう決めてから、「売るか買うか」で迷う場面がなくなりました。判断の負担が半分になり、逆張りの誘惑にも引っぱられにくくなっています。

三段を並べると、役割はこうなります。

段見るもの教えてくれること時間の長さ
方向プロの構造の見立てどちらに流れやすいか数カ月〜年単位
危うさ円ポジションとドル円崩れたときの大きさ数週間〜数カ月
タイミング自分のローソク足いつ入るか数日〜数週間

守り:小さく分けて持ち、出口を先に決めておく

三段と同じくらい大事にしているのが、守りです。方向が正しくても、自分の資金がなくなれば、その流れに乗り続けることができません。

私は、1,000通貨のような小さな単位で、玉をいくつにも分けて持っています。分けておくと、金利のニュースなどで揺れたときに一部だけ手放して、身軽になれます。

そして、出口は入る前に決めています。上がったときと下がったとき、両方です。

  • 上がったとき:節目の値段(過去に為替介入があった水準など)を超えたら、利益の少ない玉から半分を決済する
  • 下がったとき:高く買った玉から順に手放し、「全体でトントン」になる値段までには全部を手仕舞う

下がるときに高い玉から手放すのには理由があります。安く買った玉の利益を残しておくと、それが最後のクッションになるからです。逆の順番で手放すと、最後に高値で買った玉だけが残ります。

この計算は手でやると大変なので、玉の一覧を入れると「平均の取得値」や「最後の線での損益」が出る表を作りました。この表の使い方も、いずれご紹介します。

これからの連載について

次回からは、毎週更新される「円ポジションとドル円」を題材に、その週の流れを私なりに読み解いていきます。投機筋は円を売っているのか、買っているのか。それは大きな流れと合っているのか。一緒に見ていきましょう。

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※この記事は、筆者個人の考え方と取引の記録です。特定の売買を勧めるものではありません。為替取引には元本を失うリスクがあります。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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